そもそもおいしいビールってなんだろう?
そんな基本的なことを鈴木成宗さんは簡潔にわかりやすく教えてくれています。
それは、「お金を払ってもう一杯飲みたいと思えるビール」
一杯飲んだ後にもう一杯飲みたいと思えるビールは意外に多くない。同じビールを何杯も飲んでもらうためには「飲みやすさ」が重要だが、個性を追求してきたクラフトビールは飲みやすさを意識した辛口(ドライ)よりも甘みを重視する傾向にあるからだ。違和感を抱いてはダメだし、あっさりし過ぎてもダメ。尖りすぎていても、物足りなくてもいけないというわけだ。
2019年 株式会社新潮社 発酵野郎!世界一のビールを野生酵母でつくる 21Pより引用
お金を払ってもう一杯飲みたい。お金を払ってもう一つ欲しい。
ビールに限らず食べ物だったり、コンビニで買うジュースだったり。
簡単なようで意外に高いハードルですよね。
この本は伊勢の老舗餅屋の21代目、鈴木成宗さんがビール事業を始めるが軌道に乗らない。
しかい沢山の人に助けられながらビールの審査会で世界一になり、日本を代表するクラフトビールメーカーとなっていくストーリーとなっています。
この本はこんな人にお勧め!
- 実際に鈴木成宗さんが出会った、ビール業界のレジェンド達のエピソードを感じたい人。(個人的に読んでてワクワクしました)
- ビールの審査会で賞を取る方法を知りたい人。
- ビールに関連する知識をわかりやすく人に伝えたい人。
①実際に鈴木成宗さんが出会った、ビール業界のレジェンド達のエピソードを感じたい人。
登場人物が豪華でびっくりします。
マイケル・ジャクソン。あの「キング・オブ・ポップ」のマイケルじゃないんですが。
ビール業界では知らない人がいない、イギリスの世界的なビール評論家。
ベルギービールを世界に知らしめた人物で彼に飲んでもらえるだけでも光栄!ってレベルの人。
伊勢角屋に来たときのエピソードと共に、彼のテイスティングの方法を知ることがてきます!
2人目はフレック・エクハード。自家醸造の伝説的な提唱者。自家醸造のバイブルと呼ばれる世界ビール大百科を書いていて、鈴木氏もおすすめ書籍としています。そんな彼とビールの審査会の宿泊先で偶然同室(他の審査員とホテルの部屋をシェアするなら宿泊代が無料となる)になったエピソード。
他にもヤキマバレー(全米最大のホップの産地)で出会ったブリュードッグのスタッフたち。その合理的な仕事の仕方を直に目撃したエピソード。
また、米国に「クラフトビール革命」を起こしたパイオニアの一人、生きる伝説スティーブ・ヒンディーとのエピソード。
などなど。
②ビールの審査会で賞を取る方法を知りたい人。
詳しくは本書を読んでいただくとして、ざっくりまとめると、
賞を狙っているからであり、賞を取るためのアプローチを徹底しているからだと言い切っています!
本書のキーワードにもなっているPDCA(計画、実行、評価、改善)を回すこと。
またどうP(計画)を立てていくのか?世界一のビールを造る著者が教えてくれています。
③ビールに関連する知識をわかりやすく人に伝えたい人。
この書籍は難しい事を簡単に、例えを交えて説明しています。
誰かに伝えるときはこんな言い回しがあるのか〜!と具体的に参考に出来るものが山程あります。
実際に①の人物紹介文はこの書籍から学び活用していますし、私は友人に世界のビールの審査会というもの存在を知ってほしっかたときに上手に説明できなかった経験があります。
わかりやすい例えないかなー?なんて探していたので助かります。
次の文を読んで貰えれば、分かり易さが一発で納得してもらえると思います。
世界のビールの審査会には大きく2つの流れがある。
一つは「ビール会のオリンピック」といわれるアメリカのワールド・ビア・カップ(WBC)に代表される大会である。WBCではビールの「スタイル」を重視する。犬の品評会を詳しく知らないが、おそらく秋田犬なら理想的な秋田犬の姿があり、その理想にどこまで合致しているかが評価されるだろう。同じようにビールもペールエールなら理想的なペールエールをきちんと言葉で定義し、どこまで合致しているかを評価軸とする。
2019年 株式会社新潮社 発酵野郎!世界一のビールを野生酵母でつくる 65Pより引用
こんなふうな例えを交えて伝えればよかったのね…。勉強になります。
ちなみにもう一つの流れが、「ビール会のオスカー」と呼ばれるイギリスのインターナショナル・ブルーイングアワーズ(IBA)。こちらはスタイルをほとんど意識せずそれぞれのビールを評価する。ちなみに伊勢角屋麦酒はIBAで2大会連続金賞!です。
個人的に覚えておきたいポイント
4章の「酵母を探すなら、虫になれ」が印象的でした。
自分で森の中から酵母を採取しビールに活用する方法が記されています。
実際に伊勢角屋は社長が森で採取した酵母でヒメホワイトというビールを造っています。
少しメモしておきます。
- 夏のよく晴れた風のない日に、カブトムシがいそうな森に行く!
- シイやクヌギを注意深く見る
- 樹液が泡立ち、ぶつぶつと微音がしてれば発酵のサイン!
- スプーンに1杯分ほど採取
- 持参したホップと合わせた麦汁に加える
- 温度を一定に保つ
- ビールづくりに適した酵母だけ生き残る!
非常に勉強になります。
酵母の培養法などは『世界に通用するビールのつくりかた大辞典』でも学べますが、実際に森でどう採取するのかは初めて知ったので夏が楽しみです。
最後に
微生物と遊びたい!そんな純粋な想いからはじまっている伊勢角屋麦酒。
天然酵母の採取の仕方、採取した酵母を培養しビールに使う具体的な手法まで本書では公開しています。
普通のブルワリーはそこまでしないという自信の表れと、良きライバルの出現を待っているかのような雰囲気を感じました。
ビールの世界にワクワクする。そんな1冊でした。
コメントを残す