日本では、神秘性が先行している野生酵母や細菌をもちいた自然発酵のビール『ランビック』
なぜ絶滅危惧種なのか?
1900年頃のランビックの醸造所は100ヶ所以上。
2010年のランビックの生産者は12ヶ所…となっています。
ランビックについての理解が進んでほしいという願いで作られたランビックにのみスポットライトを当てたランビックの為の1冊です。
ランビックってどんなビールなの?
本書の「はじめに」で紹介されているマイケル・ジャクソン(イギリスのビール評論家、当時無名なベルギービールを世界に広めた)の書籍の一文がランビックを理解するのに役立ちます。
ランビックは、すべての者に注いでよいビールではない。だが、酒に強い関心をもつ者ならば、魅了させずにいない何かだ。その野性味と予測不可能性において、胸を踊らせる醸造酒だ。最良のものはビールとワインの合流点を具備し、最悪のものでさえ、古代の味覚へと誘ってくれる(Jackson;1998)
2011年 技報堂出版株式会社 ランビック ベルギーの自然発酵ビール はじめに より引用
もやしもん(8) でもランビックについてこんな事を言っています。
実は商品としての酒で天然酵母を取り込むものって 今はランビックぐらいなんです
2009年 株式会社 講談社 もやしもん8 22Pより引用
ランビックってビールの原点にちかい飲み物なのかなー?と想像するとロマンが広がります。
そして、本書の著者がランビックを定義してくれているので非常に理解しやすいです。
ざっくりですがまとめると、
- 狭義のランビック
蔵出しで何の加工もしていないストレートランビック。日本では基本的に流通していない。
非常に酸っぱく甘みの要素はない。
- 広義のランビック
ランビックスタイルとでも言うべきもの。グーズ(若いランビックと老いたランビックをブレンドし熟成させたもの)やさくらんぼ等を用いたクリーク等が含まれる。
甘酸っぱく、日本でいうランビックはこちらが多い。
私のランビックの印象は甘酸っぱいビールだったので、広義ランビックを飲んでいたんですね〜。
ランビック醸造の秘密に迫る「第3章」
ランビックの醸造学と題した第3章。なかなかランビックに特化したものは無いんじゃないでしょうか?
個人的に最も興味がある章です。
なんで古いホップを使うの?という疑問も歴史を元に紐解いてくれています。
実際の醸造所「カンティヨン醸造所」(伝統的な製法を保持していて、小便小僧のラベルが有名かな?)の糖化、煮沸スケジュールも掲載されており生きた情報を知ることが出来ます。
他にも長期間熟成させるランビックの発酵中の微生物の増減を表した表も分かりやすいですし、
ランビックの発酵過程を4段階に分けての解説は酵母や細菌の働きの理解を深めてくれます。
もしかすると時間をかけ一工夫すれば、伝統的な消えゆくランビックを再現できるかもしれません!(もちろんアルコール1%未満ね)
ランビックの製法に興味のある人はランビック―ベルギーの自然発酵ビールを購入するのもありだと思います。
ただ著者も書いているのですが、「麦芽とはなにか?」とか「酵母とはなにか?」ということは解説していないので、ビール造りとそのプロセスの最低限の知識が必要な本となっています。
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